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【ecojin】[自然共生サイト]辻村農園・山林

2024.08.07 09:05

自然共生サイトってなんだろう?
 


 
今月のテーマ
 
辻村農園・山林

 
神奈川県小田原市のJR小田原駅から車で西へ10分ほど移動したところに、約70ヘクタールの広大な自然共生サイト『辻村農園・山林』があります。江戸時代の旧小田原藩の直轄地であった本サイト内の山林には、樹齢300年ものスギの大木が点在し、さまざまな動植物が生息しています。市街地から遠くない場所にもかかわらず、静謐な雰囲気に包まれた辻村農園・山林では、『生物多様性を保全しながら森林を利用する多角的経営』のお手本となる事業を展開しています。
 
長きにわたり林業を営んできた辻村家では、木材の生産や管理だけでは森林経営が成り立たないという木材不況のなかで、どのようにこの森を守っていくか頭を悩ませていました。この課題を解決するために現在の8代目当主・辻村百樹さんは、2010年に自然共生型アウトドアパークの『フォレストアドベンチャー』事業を開始しました。この事業を始めるにあたり、株式会社T-FORESTRYを設立。農産物の生産と山林管理(辻村農園・山林)に加え、アクティビティ事業を運営するようになります。
 
フォレストアドベンチャーとは、専用のハーネスを着けて木から木へ空中移動するフランス発祥のアウトドアパークで、木々を伐採せずに、そのままの状態を生かしたコースで緊張感や爽快感を味わえるアクティビティです。
 
多角的経営について、T-FORESTRYの統括マネージャーの鈴木毅人さんにお話を伺いました。
 
「私たちは『多様な森林活用を組み込んだ新しい森林経営』を目指して、4つのミッションを掲げています。1つ目は木材・農産物・果実などの生産。2つ目は太陽光や水力、バイオマスなどのエネルギー創出。3つ目は希少生物保護や獣害対応などの生態系保全。そして4つ目がフォレストアドベンチャーや森林体験などの余暇提供です。
 
中心的な事業は余暇提供で、フォレストアドベンチャーは遊びを通じて自然と一体化する喜びを感じてもらうものです。また、最近ではマウンテンバイクのアクティビティである『フォレストバイク』を展開し、木々の間を走る魅力的なコースを整備しています」
 
余暇提供と生態系保全はときに相容れない関係にもなりますが、鈴木さんはこの2つは共存できると言います。
 
「フォレストアドベンチャーとフォレストバイクのために自然の木々を伐採することはありません。あくまでも自然の形を残しながらのアクティビティです。そして、人が手を入れて森をきれいに維持することが、人にとっても、動植物にとっても心地よい場所をつくります。また、本来は山中にいるべきシカが山から降りてくることが増えているので、マウンテンバイクを走らせることで『ここから下は人間が住むエリアだよ』と動物に伝えて山中に戻す役割があります。ときには人の存在が適正な生態系を維持するために必要なのです。
 
人材面でも林業とレジャーは相性が良いと思います。最初から林業をしますと言っても、なかなか若い人は集まりませんが、レジャーを入り口に林業を体験するという流れにすると興味を持ってくれる。もともと自然に興味がある私たちインストラクターは、生態系保全の活動に対して関心が高いため、森の手入れなども楽しく取り組んでいますよ」
 
多角的経営を進めるT-FORESTRYは、その他にどのような活動をしているのでしょうか。今後の目標についてもお聞きしました。
 
「敷地内に公衆テントサウナをつくったり、バーベキューのできる『いこいの森』を運営したり、1年中アウトドアが楽しめる施設の管理をしています。農林業者の鳥獣被害をハンターとのマッチングで解決する『ハンターバンク』というサービスにも参画して、狩猟具の用意や解体方法のレクチャーをしています。また、大正時代につくられた小水力発電所の遺構の見学ツアーでは、里山に根ざした再生可能エネルギーへの啓発を図っています。
 
今後の課題としては、暑さや天候に左右されるレジャー業を安定させることです。そのためには、辻村農園・山林のユニークさをもっとアピールしていく必要があります。たとえば、2024年にはフォレストバイクが国土交通省の自転車活用推進功績者表彰を受賞しました。さらに、辻村農園・山林の生態系については、私たちが普段見慣れて当たり前のように思っていたけれど、実はとても珍しい動植物がたくさんいるので、そのあたりをもっと皆さんに知ってもらいたいと思っています。夏のシーズンには敷地内にクワガタやカブトムシがいっぱい現れますし、シャワークライミングといって、水しぶきを浴びながら岩肌を登るイベントも予定しています。ぜひ私たちの施設に来て、人が自然のなかの一員として生きていることを実感していただきたいです」
 
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