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【資源エネルギー庁】世界で高まりを見せる原子力利用への関心 COP28でも注目

2024.03.08 09:05

エネルギー安全保障の確保やCO2排出削減の観点から、原子力エネルギーの活用に世界の注目が集まっています。2023年にUAEで開催された「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」では、原子力の果たす役割が改めて注目され、その有効性が決定文書に明記されたほか、世界全体の原子力発電容量を増やしていこうという共同宣言も発表されました。
今、世界で原子力発電をめぐってどのような動きがあるのか、ご紹介します。
 
主要国のうち、順調に目標に向かって排出削減が進展しているのは日英
2023年11~12月にUAEのドバイで開催されたCOP28では、パリ協定で掲げられた目標達成に向けて、世界全体の進捗状況を評価する最初の「グローバル・ストックテイク(GST)」がおこなわれ、決定文書が採択されました(サイト内リンクを開く「気候変動対策、どこまで進んでる?初の評価を実施した『COP28』の結果は」参照)。
下のグラフで分かる通り、日本では、コロナ禍からの経済回復によってCO2排出量は2020年度からやや増加したものの、2019年度からは3.4%減少しており、2030年度目標の達成および2050年カーボンニュートラル実現に向けて、順調に取り組みが進んでいます。
 
COP28の合意文書に原子力利用が初めて記載
こうした各国の排出削減状況や、全世界的に見た進捗の遅れに関する議論を踏まえ、あらためて、再生可能エネルギー(再エネ)や原子力の活用の有効性についてスポットが当たることとなり、COP28の決定文書に原子力利用が明記されました。世界原子力協会(WNA)によれば、COPの合意文書において、原子力が気候変動に対する解決策の一つとして正式に明記されたのは今回が初めてのことです。
 
「グローバル・ストックテイク」における原子力の記載(抄訳)
28. さらに、1.5℃の道筋に沿った温室効果ガス排出量の深く、迅速かつ持続的な削減の必要性を認識し、締約国に対し、パリ協定と各国の状況、道筋、アプローチを考慮に入れ、国毎に決定された方法で、以下の世界的な取組に貢献するよう求める:
(中略)
(e) 特に、再生可能エネルギー、原子力、特に排出削減が困難なセクターにおけるCCUS等の排出削減・除去技術、低炭素水素製造を含む、ゼロ・低排出技術の加速
さらに、COP28期間中の2023年12月2日には、日本を含む22カ国による「2050年までに2020年比で世界全体の原子力発電容量を3倍にする」との野心的な目標に向けた協力方針を掲げた共同宣言も発表されました。その後さらに3カ国が参加し、賛同国は2024年1月時点で25カ国となっています。
 
共同宣言に賛同した25カ国
UAE、米国、フランス、日本、英国、カナダ、韓国、フィンランド、スウェーデン、ベルギー、ルーマニア、ポーランド、ブルガリア、チェコ、ウクライナ、スロベニア、スロバキア、ガーナ、カザフスタン、モロッコ、モルドバ、オランダ、アルメニア、ジャマイカ、クロアチア

(参考)原子力3倍宣言(抄訳)
今世紀半ば頃までに世界全体で温室効果ガス排出のネット・ゼロ/カーボンニュートラルを達成し、気温上昇を1.5℃に抑えることを射程に入れ、持続可能な開発目標(SDGs7を達成するにあたっての、原子力の重要な役割を認識し、……
気候変動に関する政府間パネルIPCCの分析によれば、平均1.5シナリオでは、2020年から2050年にかけて、世界の原子力発電設備容量が約3倍に増加することを認識し、…
各参加国の異なる国内事情を認識しつつ、2050年までに2020年比で世界全体の原子力発電容量を3倍にするという野心的目標に向けた協働にコミットする。(以下略)
ただし、この共同宣言には法的な拘束力はありません。
また、「各参加国の異なる国内事情を認識しつつ」と書かれていることからも分かるように、賛同国それぞれが国内で原子力発電容量を3倍にするというのではなく、あくまで世界全体で3倍にするという目標に向けて協働する意思を示したものです。
それでは、なぜ、今このように原子力エネルギーに注目が集まっているのでしょうか。その答えとして、まずは、2050年カーボンニュートラルの達成に向けて重要な役割を担う脱炭素エネルギー源の一つとして認識されていることが挙げられます。
また、ロシアによるウクライナ侵攻以来、緊迫するエネルギー情勢の中で、原子力はエネルギー安全保障の確保の観点からも有用であるという認識が高まっているのです。
 
2024年初頭における、世界の原子力利用の動向は?
具体的に、世界の国々において、原子力の利用を広げていく動きがあるかどうか、見ていきましょう。2024年1月現在、世界で最も多い93基の発電用原子炉が稼働している米国では、小型モジュール炉(SMR)と呼ばれる新たな型式の原子炉の開発が進んでいます。
英国でも現在9基が稼働しており、2030年までに最大8基の新設計画を決定すべく取り組んでいます。電源(電気をつくる方法)の原子力比率が62.6%と高いフランスは、現在56基が稼働していますが、2050年までに6基、さらに可能であれば8基追加での新設を検討しています。
このように、すでに原子力を活用している国々で、さらに原子力発電所を増加させる動きが見られます。
これまで脱原発を目指していた国ではどうでしょうか。
2023年3月に国内の全ての原子力発電所での発電を終了したドイツのような例もある一方で、方針を転換する動きもあります。
イタリアは1990年に国内すべての原発を閉鎖し、脱原発の方針を明らかにしましたが、2023年9月に、原子力エネルギー利用の再開を可能にし、国内の原子力産業を成長させるための政策方針を定めるべく、新たな検討プラットフォームを立ち上げました。
 
 
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