東北の環境パートナーシップを応援します。

お知らせ

お知らせ

【ecojin】[自然共生サイト]橋本山林

2024.03.07 09:05

林業家として森林経営と生物多様性保全の両立を目指す貴重なモデルが、徳島県那賀町にあります。
面積の約95パーセントが森林の町で、明治時代から4代にわたり専業で自伐(じばつ)型林業を行っている橋本山林です。
 
橋本山林では自伐型林業により、『経済性と環境保全を高い次元で両立する持続的森林経営』に取り組んでいます。
自伐型林業は、広範囲の木を一斉に切り落とす皆伐(かいばつ)を行わず、定めた範囲内を定期的に伐採していく間伐をすることによって、その土地の土壌を弱めることなく、災害に強く生態系豊かな森林をつくることを目的としています。
 
橋本山林は明治40年ごろから、家族で自伐型林業を営んできました。初代の考えがすでに生物多様性保全につながるものであり、現在もその考えは橋本光治さん、延子さん、息子の忠久さんの親子3人に引き継がれています。
長年の活動によって、110ヘクタールもの山林にスギを中心とした人工林のほか、モミ、ケヤキ、シイ、カシなどが生育するといった、針葉樹と広葉樹が混交しているのが特徴です。
そして、250種以上の植物種が存在し、そのうちの10種は徳島県の絶滅危惧種となっています。
 
光治さんと延子さんのご夫婦は持続可能な林業経営が評価され、2016年に内閣総理大臣賞と農林水産大臣賞をダブル受賞しています。延子さんに橋本山林についてお話を伺いました。
 
「1978年に主人が先代から森林経営を引き継ぐまで、木の伐採や搬出を業者に委託していた時期があり、樹齢100~150年の良質な木が伐採されるなど、山が荒れ始めていました。
その様子を見ていた主人が『このままではいけない』と思い、当時勤めていた会社を辞めて林業の道に進んだのです。
全ての木を伐採してしまう皆伐をすると一時的な経営としてはいいのかもしれませんが、山に木がなくなるため、その後は何十年もかけて植林などの重労働によって再生していかなければなりません。
これでは長期的に見た場合には経営的にも厳しくなることは分かっていました。なによりも皆伐は土砂流出などの災害へのリスクを高めてしまうということもあります」
 
「そこで、私たちは小分けに木を切っていく間伐を定期的に繰り返す『持続的な森林経営』を行い、良い木は残して太らせてきました。いわゆる『切り尽くさない林業』を行うため、小型の機械で自ら作業道をつくり、自ら伐採し木材を運び出すという自立・自営の林業を始めたのです」
 
自伐型林業について、後継者である忠久さんにお話しいただきました。
「私たちの目指す自伐型林業とは、自然や地形に逆らわず、環境を一気に変えないことが重要なので、林業というよりも造園に近いイメージかもしれません。
林業を通したトータルデザインですね。そして、50年後、100年後の未来の人たちに恥じないように今の活動を維持していき、人工林か天然林なのかが分からないくらいのクオリティーにして育てていきたいと思っています。
 
そして、橋本山林は個人の財産だけでなく、国土を預かっているという思いがあります。これからも森林の中でのイベントや音楽祭などを企画し、人と人をつなぐ場にもしていきたいと考えています」
 
最後に延子さんから、自伐型林業は自然や人への思いやりが根底にあることを教えていただきました。
「山や木も人と同じです。
空気がよどんでいたら不健康な一方、明るい木は健康で生命力があります。人も自然も住む場所が気持ちのいいことが大切です。そのためには、木を伐採したときに落ちた枝を放置せずに取り除き、人が歩きやすくしたり、空気や風の通りを良くして木の成長を促すなど、何気ない日常の中での気遣いが大切だと思います。そして、自伐型林業の『自』は、自由自在の『自』です。自分で思い描いていくことができる林業には、大きな魅力と可能性があると感じています」
 
今回お話しいただいた橋本さんご一家は、全国各地の自伐型林業の展開を支援する自伐型林業推進協会に所属しています。
森林の持つ公益的な機能を維持しつつ持続的な利用を目指す林業であり、専業だけでなく兼業もできるのが自伐型林業です。
 
→詳細はこちらからご覧ください(外部リンク)